【代金未払い・債権回収】仕事上のトラブル
はじめに
仕事を終えたにもかかわらず、約束していた代金が支払われない。
請求書を送っても返事がない、電話をしてもはぐらかされる。
このような「代金未払い」のトラブルは、業種や規模を問わず非常に多く発生しています。
特に、契約書を作成せず、口約束やメール・LINEだけで仕事を進めてしまった場合、
「契約書がないから回収できないのではないか」と不安に感じる方も少なくありません。
しかし結論から言えば、
契約書がなくても、仕事の代金を請求できるケースは数多く存在します。
重要なのは、契約が成立していたことをどのように立証し、
どの順番で手続きを進めれば回収できる可能性が高まるのか、という点です。
本記事では、売買代金や作業代金が支払われない場合に、
どのような法的根拠で請求できるのかを整理したうえで、
内容証明郵便や支払督促を使う適切なタイミング、
さらに未払いを防ぐための契約書のポイントまで、実務目線で解説します。
代金未払いトラブルでよくあるパターン
仕事上の未払いトラブルには、次のような典型例があります。
- 商品を納品したのに売買代金が支払われない
- 作業や業務を完了したが報酬が振り込まれない
- 「後で払う」と言われたまま請求書を無視されている
- 口約束だったため相手が支払い自体を否定している
これらの多くは、
「契約書がない」「支払い条件が曖昧」という共通点を持っています。
ただし、それだけで請求を諦める必要はありません。
未払い問題は、相手が最初から悪意を持っている場合だけでなく、
資金繰りが苦しい、社内承認が滞っている、担当者が放置しているなど、
複数の原因が絡んで起きることもあります。
だからこそ、最初に事実と証拠を固め、段階的に詰めることが重要です。
口約束でも契約は成立するという法的原則
契約は書面がなくても成立する
民法上、契約は当事者の意思の合致によって成立します。
必ずしも書面や契約書が必要なわけではありません。
例えば、次のようなやり取りがあれば、基本的に契約は成立します。
- 「この仕事をこの金額でお願いしたい」
- 「その条件で引き受けます」
これが、いわゆる「口約束でも契約は成立する」という考え方です。
実務でも、契約書がない案件であっても回収に至るケースは少なくありません。
立証のカギはメールやLINEなどの証拠
問題になるのは、
その合意があったことをどう証明するかです。
契約書がない場合でも、次のような資料は重要な証拠になります。
- 仕事の依頼内容が書かれたメールやLINE
- 金額や納期、支払条件に触れているメッセージ
- 見積書・発注書・請求書
- 納品データ、納品メール、作業報告(いつ何をしたか)
- 入金予定の連絡、支払いを認める発言(「来週払う」等)
これらを時系列で整理することで、
「確かに仕事を依頼され、合意のもとで業務を行った」
という事実を立証しやすくなります。
請求の第一段階:冷静な催促と証拠整理
いきなり強い法的手段に進む前に、まずは冷静に状況を整理します。
ここで曖昧なまま進むと、相手に言い逃れの余地を与えてしまいます。
- いつ、どんな仕事をしたのか(期間・内容)
- 報酬額はいくらか(税込・税抜、追加費用の有無)
- 支払期限はいつだったか(締め日・支払日)
- 納品・完了の事実が確認できる資料は何か
これを明確にした上で、メールや文書で支払いを求めます。
この段階で支払われるケースも少なくありません。
ポイントは、感情的な表現ではなく、
「請求額」「支払期限」「振込先」「未払いの場合の対応」を淡々と記載することです。
相手が放置しているだけなら、ここで動くこともあります。
内容証明郵便を送るべきタイミングと意味
内容証明郵便の役割
口頭や通常のメールでの請求を無視される場合、
次に検討すべきなのが内容証明郵便です。
内容証明郵便は、
「いつ・誰が誰に・どのような内容の文書を差し出したか」
を郵便局が証明してくれる制度です。
内容証明を送ることで得られる効果
内容証明郵便を送ることで、次のような効果が期待できます。
- 相手に本気度が伝わり、支払いに応じる可能性が高まる
- 請求の事実(請求額・期限・根拠)を証拠として残せる
- 支払期限を明確にし、遅延損害金の起算点を整理しやすくなる
- 時効完成の猶予に関わる主張・証拠として使える
特に「これ以上放置すると法的手続きに進む」という意思表示として、
心理的な効果も大きく、交渉が前進することがあります。
内容証明に入れておきたい基本要素
内容証明は、長文で相手を責めるより、
「事実」と「請求」を端的に構成する方が効きます。
- 取引の概要(いつ・何の業務/納品物か)
- 合意した報酬額
- 納品・完了の事実
- 支払期限と振込先
- 期限までに支払いがない場合の対応(支払督促等を検討)
それでも支払われない場合の支払督促という選択肢
支払督促とは何か
内容証明を送っても反応がない場合、
簡易裁判所を利用した支払督促を検討します。
支払督促は、裁判よりも簡易な手続きで、
原則として書類審査のみで進むのが特徴です。
支払督促のメリットと注意点
メリットとしては、次の点が挙げられます。
- 比較的低コストで申し立てできる
- 相手が異議を出さなければ強制執行に進める可能性がある
一方で、相手が異議を出すと通常訴訟に移行するため、
「相手が争ってくる可能性が高いか」
「証拠がどれだけ固まっているか」
を見極めることが重要です。
相手が明らかに支払いを引き延ばしているだけなら、
支払督促は有効な圧力になり得ます。
未払いトラブルを防ぐために契約書が果たす役割
契約書があるだけで回収難易度は大きく下がる
未払いトラブルの多くは、
「最初に契約書を作っていなかった」
または「最低限の合意事項が書面化されていなかった」ことが原因です。
契約書があれば、次の事項を明確にできます。
- 業務内容(成果物・範囲・追加作業の扱い)
- 報酬額(税、実費、分割・出来高の有無)
- 支払期限(締め日・支払日・遅延時の利息等)
- 検収・納品・完了の定義
これにより、相手の言い逃れを防ぎ、
回収までの手順も組み立てやすくなります。
シンプルでもよいから書面化する重要性
必ずしも分厚い契約書が必要なわけではありません。
業務委託契約書や売買契約書を、シンプルでもよいので作成し、
最低限の合意事項を条文化しておくだけで、将来のトラブル防止につながります。
少なくとも、
「何をするか」「いくらか」「いつ払うか」
の3点は書面で残すのが安全です。
まとめ:未払いは放置せず、段階的に対処する
仕事の代金が支払われない場合でも、
口約束だからといって諦める必要はありません。
- まず証拠を整理し、請求内容を明確にする
- 通常の催促で動かなければ、内容証明郵便で正式に請求する
- 必要に応じて支払督促など裁判所手続きを検討する
そして何より、未払いを防ぐためには、
契約書の作成が最も有効な予防策です。
代金未払い・契約書作成は専門家にご相談ください
当事務所では、売買代金・作業代金の未払いに関する
内容証明郵便の作成、証拠整理のサポート、
将来のトラブルを防ぐための契約書作成を行っています。
「口約束だから無理かもしれない」
「どこまで請求できるのか分からない」
と感じた時点で、ぜひ一度ご相談ください。
状況に応じた現実的な解決策をご提案いたします。
お問い合わせはフォームまたはLINEから受け付けております。
秘密厳守で迅速に対応いたしますので、お気軽にご連絡ください。
